水素・CO2利活用関連ニュース 2023.7.3
水素・CO2利活用関連ニュース 2023.7.3

水素・CO2利活用関連ニュース 2023.7.3

政策・規制、検討会関係

経産省 ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会とりまとめ案提出     2023.6.28

 経産省は6月28日、ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会を開催し、とりまとめ案を提出した。2050年にカーボンニュートラル(CN)を達成するためには、最大限CO2の排出を削減したとしても最終的にCO2の排出が避けられない分野からの残余排出がある。これを相殺する手段として、大気中のCO2除去(CDR:Carbon Dioxide Removal)が必須であり、IPCC AR6のシナリオによれば、日本の将来的な残余排出量は年間0.5から2.4億トンと推定され、2050年に日本国内で年間数億トンのCDRが必要となる。

 CDRのために大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化技術として次表のようなネガティブエミッション技術(NETs)がある。海外ではDACCSやBECCSへの支援や取り組みの動向が見られる。

 これらのNETsの現状分析を行うためには、TRL(Technology Readiness Level:技術成熟度)や除去コストなど10の視点が必要となるが、今後政府としてネガティブエミッション市場の創出に向けて、市場形成初期段階での支援策の検討やカーボンクレジットなどの活用環境環境の整備、必要なルールの合意形成などの働きかけを行っていくとしている。

水素・アンモニア関連

豊田通商 トヨタ、三菱化工機とタイでバイオガスから水素製造装置を導入        2023.6.26

 豊田通商は、トヨタと三菱化工機と共同で、タイにバイオガスから水素を製造する装置を11月に導入すると発表した。報道によると、タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループの養鶏場から糞尿を回収し、三菱化工機が製作する水素製造装置でメタン発酵バイオガスから1時間に1Nm3の水素を製造する計画。製造した水素はCPグループが配送に使用する燃料電池車への活用を検討している。運用は豊田通商が行う。

デンソー SOECによる水素製造の実証を開始 2023.6.27

 デンソーは、独自に開発したSOECによるグリーン水素の製造、および製造した水素を電動車のインバータ部品のひとつであるパワーガードの試作品製造ラインに活用する実証をデンソー広瀬製作所において7月より行うと発表した。

 デンソーのSOECは、内部の温度を700℃に一定に保つ熱マネジメント技術や、高温で電気分解を行うためのセラミック技術、水蒸気を装置内で再循環させるエジェクター技術など自動車用部品開発・製造で培った技術が導入されている。

ENEOS Direct MCH®による水素のFCVへの充填式を開催       2023.6.27

 ENEOSは6月26日、有機ハイドライド電解合成法Direct MCH®によって製造した水素を横浜綱島水素ステーションで燃料電池車(FCV)へ充填を行う式典を開催したと発表した。

 ENEOSは豪州クイーンズランド州ブリスベンでMCHの大量製造に向けDirect MCHを活用した電解槽の大型化に取り組み、太陽光発電と組み合わせたグリーンMCHの実証を行っている。式典では豪州で製造したMCHからENEOSの中央技術研究所で水素を取り出し、トヨタ製FC小型バスに充填した。

東洋エンジニアリング アンモニア合成触媒の商用化に向けた覚書を締結        2023.6.27

 東洋エンジニアリングは6月14日、東京工業大学、エフ・シー・シーなどと、東工大の原亨和教授らが開発したアンモニア合成触媒の実証に向けた開発に取り組む覚書を締結したと発表した。貴金属を使用しない鉄-ヒドリド触媒で、従来400-600℃、15-20MPaという高温高圧化で合成されるアンモニアをより低温低圧の条件で合成ができるとしている。

つばめBHB アンモニア製造プロセスに分離膜を導入 省エネに寄与    2023.6.28

 オンサイト型アンモニア製造システムを開発しているつばめBHBは、アンモニア製造時に必要な電力を20%削減できる分離膜を導入する省エネ型アンモニア製造プロセスの開発に着手したと発表した。

 ハーバーボッシュ法(HB法)アンモニア合成プロセスでは、アンモニア反応器の出口ガスに未反応の窒素や水素が含まれるため、大量の未反応ガスをリサイクルする必要があり、既存システムでは混合ガスを冷却することでアンモニアを分離していた。

 つばめBHBは三菱ケミカルグループ提供の分離膜を使用し、冷却器を使用しないで透過ガスのアンモニア濃度が95%以上になることを確認した。分離膜プロセスでは冷凍機が不要になるため電力消費が低減できるとしている。

IHI マレーシア火力発電所でのアンモニア・バイオマス燃焼FS完了       2023.6.28

 IHIは、2022年度から実施していたマレーシア国営電力会社テナガ社(Tenaga Nasional Berhad:TNB)の子会社TNBパワー(TNB Geneco)の石炭火力発電所でのアンモニアやバイオマス燃焼技術の適応に向けた技術的、経済的な検証が完了したと発表した。今後、IHIはTNB Genco社と脱炭素化計画の骨子を策定し、大規模化に向けて詳細なFSを実施するとしている。

合成燃料関係

伊藤忠 大阪・関西万博に向けリニューアブルディーゼルの供給拡充    2023.6.28

 伊藤忠商事は、伊藤忠エネクスなどと共同で応募した大阪府の「令和5年度カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に「RD(リニューアブルディーゼル)を用いた建設・輸送分野における脱炭素化実証事業」が採択されたと発表した。伊藤忠商事はリニューアブル燃料大手のNeste社からRDを調達し、共同提案者であるいすゞがトラック・産機用エンジン試験を実施、鹿島建設、鴻池組、清水建設、竹中工務店が建設工事での利用実証に取り組む。

CCS関連

東芝エネルギーシステムズ マレーシア国営電力会社とCO2分離回収技術の適用検討を開始     2023.6.27

 東芝エネルギーシステムズは、マレーシア国営電力会社テナガ・ナショナル(Tenaga Nasional Berhad)の発電子会社であるTNB Power Generation Sdn Bhd(TNB GenCo)と、CO2分離回収技術をマレーシアにおける火力発電所へ適用する検討を開始することに合意したと発表した。今後、9月以降TNB GenCo社の技術者を東芝ESSが受け入れ、CCS設備の導入・運転に関する訓練を行ったうえで、TNB GenCoが保有するジマイースト石炭火力発電所などを対象にCCS設備の導入に向けた動きを推進するとしている。

三井物産 マレーシアでのCCS事業の共同開発に関する契約を締結    2023.6.27

 三井物産は、マレーシア国営石油会社ペトロナスおよびフランスのエネルギー会社トタールのCCS事業会社TotalEnergies Carbon Neutrality Ventures(トタール・エナジーズ)との間で、マレーシアでのCCSの共同開発に関する契約を締結したと発表した。

三菱重工 CO2回収会議をバーレーンで開催   2023.6.29

 三菱重工はバーレーンの石油化学会社ガルフ・ペトロケミカル・インダストリーズ社(GPIC)と共同で、三菱重工のCO2回収技術を採り入れている顧客を中心としたユーザーカンファレンスを、バーレーンの首都マナーマで5月17、18日に開催したと発表した。中東地域での三菱重工グループのプレゼンスの向上につながったとしている。

川崎重工 米国ワイオミング州にCO2分離回収技術実証試験設備を設置        2023.6.30

 川崎重工は一般財団法人カーボンフロンティア機構と共同で、米国ワイオミング州ジレット市ある石炭火力発電所に隣接する統合試験センター(ITC)においてCO2分離回収技術実証試験設備の設置を行い、2023年5月2日に起工式を行ったと発表した。

 実証試験は環境省が委託する事業により行うもので、川崎重工が独自に開発したアミン固体吸収剤を使用して、発電所から排出される排ガスからCO2を分離回収する際のアミン由来の物質の環境影響評価試験を実施する。10月末にまでに試運転を完了し、11月から環境影響評価試験を実施する予定としている。

運搬・貯蔵、燃焼、利用関係

大陽日酸 アンモニアをガラス溶解炉の燃料として使用         2023.6.27

 大陽日酸は6月18日から19日にかけてAGCの横浜テクニカルセンターで、建築用ガラス製造溶解炉にアンモニア・酸素燃焼バーナを導入し、アンモニアによる燃焼実証試験を行ったと発表した。NEDOの委託事業「工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」によるもので、今後数回アンモニア燃焼の実機試験を行った後、2024年度以降スケールアップを行い、2026年度以降のガラス溶解炉への本格導入を目指すとしている。

三菱造船、日本郵船 アンモニア・液化CO2兼用輸送船のAiPを取得             2023.6.29

 三菱造船と日本郵船は、アンモニア輸送と液化CO2(LCO2)輸送を兼用可能な「アンモニア・液化CO2兼用輸送船」の基本設計承認(AiP)を、一般財団法人日本海事協会から取得したと発表した。三菱造船と日本郵船はそれぞれ、アンモニアとLCO2の各専用輸送船の技術開発に取り組んでいる。今回のAiP取得を通じて、両社が蓄積したアンモニアとLCO2に関する知見を生かし、同一船舶によるアンモニアとLCO2の安全かつ経済的な輸送を目指すとしている。

ニュースウォッチ

  • 国交省、アンモニア燃料拡大に向けた研究開発などを3件を支援 2023.6.26
  • 岩谷産業、水素関連事業に2000億円投資 2023.6.27
  • 石油連盟会長、SAF「2030年の需要量確保にメド」 2023.6.27
  • 商船三井とシェブロン、船舶輸送のGHG排出削減で協業 2023.6.27
  • ハウス農場とバイオマスでCO2マイナスに 岡山のサラ 2023.6.28
  • アンモニア、混ぜて燃やす 九州電力が探る低炭素火力 2023.6.29
  • 建材にCO2封じ込め 住友商事系VC出資の中国新興 2023.6.29
  • グリーンカーボン、三菱商事系と水田クレジットで協業 2023.6.29
  • 資源エネ庁、CO2貯蔵等を推進する「燃料環境適合利用推進課」など新設 2023.6.29

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