政策・規制関係
日本政府 「水素基本戦略」を6年ぶりに改訂 2023.6.6
日本政府は、6年ぶりに「水素基本戦略」の改訂版を発表した。改訂された水素基本戦略では、これまでの2030年の水素等を300万トン、2050年2000万トン程度としていた導入目標に加え、2040年に1200万トンに拡大するという新たな目標を設定した。また、世界の先進地域に後れを取っている水電解装置の導入目標について2030年までに15GW程度の導入目標を設定した。
改定版水素基本戦略では、世界各国の水素政策動向を分析したうえで、競争力強化の方向性を示す「水素産業戦略」と、安全確保の「水素保安戦略」を新たに重要な柱として盛り込んだ。海外需要の取り込みを視野に入れたもので、今後15年間で官民合わせ15兆円を投資する。
水素産業戦略は、水素供給、脱炭素型発電、燃料電池、水素の直接利用、水素化合物の項目に整理され、2017年に発表された水素基本戦略で言及されていた電力分野、モビリティ、産業プロセス・熱利用など個別分野での羅列に比べ、包括的に整理され、合成メタン(e-mthane)や合成燃料(SAF)についてもカーボンリサイクル製品として取り上げられている。
水素・アンモニア関連
川崎重工 大型液化水素運搬船用貨物タンクの技術開発を完了 2023.6.6
川崎重工は、大型液化水素運搬船用の貨物タンクの技術開発を完了したと発表した。水素を液化して海上輸送するためには、マイナス253℃に冷却し長期間安定して保冷する必要がある。川崎重工は、内外に二層になった構造で二段階の断熱を行う球状の貨物タンク「CC61Hタイプ」を開発した。試験用タンクでの試験で計画通りの断熱性能が得られることを確認し、技術開発を完了した。
三菱重工 マレーシアでのクリーンエネルギー技術でFS 2023.6.7
三菱重工業は、マレーシアの発電事業者Tenaga Nasional Berhadの子会社であるTNB Power Generation Sdn. Bhd.(TNB Genco社)との間で、クリーンエネルギー技術に関する調査と情報交換を行う覚書に調印したと発表した。マレーシア国内でTNB Genco社が計画する、水素対応GTCCの導入に関して技術的FSを手始めに、「水素の製造・輸送・貯蔵および関連インフラを含む水素とアンモニアのバリューチェーン構築」「火力発電所におけるカーボンフリー燃料の専焼・混焼技術」「CO2回収」に関する共同調査を行うとしている。
INPEX 豪州北部準州でのクリーン水素ハブ構築に豪州政府から補助金 2023.6.7
INPEXは、オーストラリア政府から豪州で進めているダーウィン・クリーン水素ハブ構想に100万豪ドルの補助金が支給されたと発表した。INPEXは豪州子会社を通じて、オーストラリアの石油・ガス大手Santos、英国のコンサルタント会社Xodusおよびオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と共に、豪州国内外の水素・メタノール・アンモニア等の由来物の需要調査などを調査するダーウィン・クリーン水素ハブ構想プロジェクトを推進している。
JERA、日本触媒、千代田化工 アンモニア分解技術を共同開発 2023.6.9
JERA、日本触媒、千代田化工建設は、大規模アンモニア分解触媒の技術開発について、NEDOの「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」に共同で応募し、採択されたと発表した。日本触媒がアンモニアから水素を取り出す触媒の基本製法の確立について検討し、JERAがベンチ試験で触媒性能を確認、千代田化工がベンチ試験装置の設計および大規模化に向けた課題を整理することで、アンモニア分解技術の高効率化・低コスト化を目指す。
ENEOS、JERA 水素の品質規格体系の構築に向けた研究開発を開始 2023.6.9
ENEOSと株JERAは、産業用途での水素の品質規格体系の構築について研究開発を開始すると発表した。NEDOの「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/大規模水素サプライチェーンの構築に係る技術開発」の委託先として採択された。研究開発では、ENEOSが産業燃料用途に対応する水素性状の調査を、JERAが発電用芳香族系化合物等の影響評価を実施し、両社で各用途の水素性状に関する業界規格化に向けた検討を行う。ENEOSは水素キャリアとしてMCHの開発に力を入れている。
合成燃料関係
旭化成、三井物産 バイオメタノールの供給・調達体制を構築へ 2023.6.8
旭化成と三井物産は、米国で生産したバイオメタノールを活用したエンジニアリングプラスチックを生産するためのサプライチェーンを構築する予定と発表した。三井物産は米国で都市廃棄ごみから出るバイオガス経由の再生可能天然ガス(RNG)を調達し、現地合弁会社でバイオメタノールを生産している。旭化成は三井物産が製造したバイオメタノールをマスバランス方式で同量原材料を使用し、ポリアセタール(POM)樹脂など各種エンジニアリングプラスチックを生産販売することを目論む。
運搬・貯蔵、燃焼、利用関係
JERA 米国火力発電所での水素混焼に向けたガスタービン改造工事が完了 2023.6.7
JERAは、米国・リンデンガス火力発電所6号機での水素の利用に向けたガスタービンの改造工事が完了し、隣接する石油精製所で発生した水素を含むオフガスと天然ガスの混焼が可能となったと発表した。工事完了に伴い。同発電所6号機では体積比40%までの水素混焼が可能になる。火力発電所での水素混焼はCO2排出量低減に寄与するが、日本での発電利用には時間がかかることが想定されるため、先行して水素調達が可能である米国での発電所での利用を進めた。
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