経産省 バイオディーゼルの課題 2025/3/25
経済産業省は、3月25日脱炭素燃料政策小員会を開催し、「バイオディーゼルに関する国内外の動向ついて」という資料を通じて、国内のバイオディーゼル燃料に関する現状と課題認識を示した。
建機や商用車など軽油使用車両のEV化や水素燃料FCVはエネルギー密度の面からハードルが高いとし、2025年2月に閣議決定したエネルギー基本計画では、運輸部門ではバイオディーゼルの導入を推進する」と明記されたことについて言及している。
バイオディーゼルは、①廃食油を原料としてメチルエステル化処理により製造するFAME(Fatty Acid Methyl Ester)、②植物油などを水素化分解したHVO(Hydrotreated Vegetable Oil)がある。また、今後の技術として合成燃料の精製によるeディーゼルも軽油代替燃料として期待されている。ここで、バイオディーゼル燃料(BDF)に分類されるのは、①FAME②HVOであるが、②HVO③eディーゼルはリニューアブルディーゼル(RD)とも分類される。

FAMEはHVOに対してコスト面で有利であるが、それでも軽油製造コストに対して2倍弱程高い。HVOは軽油の3~5倍高いとみられる。FAMEには、酸化しやすいため長期保管ができないという課題がある。
経産省が提示した課題としては、FAMEに関するものとして、現状規制では軽油へのFAME混合比率が5%までと低く、脱炭素効果が低い、およびB20、B30といった高濃度FAME混合燃料について機械メーカーなどの保証が現状得られないというものが挙げられた。
HVOについては、JIS規格上の取り扱いが定まっておらず、軽油への高濃度混合品質管理もない。税法上軽油とみなされず流通量が制限されることがある。
FAME・HVO両方に関係したこととして、軽油に混合した燃料が軽油の定義に当てはまる場合、軽油のかさ増し分として軽油引取税が課税される。ガソリンへのバイオメタノール混合については、バイオメタノール部分は免税措置が設けられていて、BDFについても課税のあり方について検討すべきではないかと指摘している。
FAME製造は、2015年に49事業者により15,391kLの生産量を記録したのち減少に転じ、2023年には36事業者10,579kLとなったが、2025年に稼働を開始するプラントがあるなど増加傾向にある。

HVOについては、SAFの連産品として今後HVOの生産が期待される。

エネルギー会社などからBDFやRDに関する動向が発信される中、税制を含めた政策、企業の動向に注視したい。
水素、アンモニア、LOHC
IHI インドでのグリーンアンモニア製造PJに出資検討 2025/3/24
IHIは、北海道電力、三菱ガス化学、商船三井、みずほ銀行、東京センチュリーと共同で、インドのエネルギー事業者アクメグループがインド・オディシャ州で開発を進めるグリーンアンモニア製造プロジェクトへの出資検討を目的とした覚書を締結したと発表した。プロジェクトは、2030年までにグリーンアンモニア製造設備を新設の上、年間約40万トンのグリーンアンモニアを製造し、日本への輸送、需要家への供給を計画する。6社は連携し、アンモニア製造の特別目的会社(SPC)の設立および出資参画に向けた具体的な検討を進めるとしている。
JOGMEC カナダ・アルバータ州とエネルギー協力の覚書を更新 2025/3/25
JOGMECは、3月11日、カナダ・アルバータ州政府と、石油・天然ガス、水素・アンモニア、CCSについての協働を目的とする覚書を更新したと発表した。両社は2017年に石油・天然ガス分野での相互協力に関するMoUを締結し、2021年には水素・アンモニア、CCS分野についても協力分野を拡大した。JOGMECは、アルバータ州との協力を通じて、エネルギー資源の日本への安定供給およびカーボンニュートラル社会実現に貢献していくとしている。
コスモHD 静岡大学と海水からグリーン水素製造を検討 2025/3/26
コスモエネルギーホールディングスは、静岡大学と海水の電気分解によるグリーン水素製造に向けた共同研究契約を2025年1月6日に締結したと発表した。静岡大学工学部機械工学科の佐野吉彦准教授は、CO2固定による海水資源回収技術を研究している。特許7538489では、マグネシウムを含む海水を電解することで水に対して難溶性のマグネシウム水酸化物を生成させマグネシウムを回収する方法を発明している。電解工程はCO2を固定化するとともに電解による水素を生成するCarbon dioxide Ocean Capture and Reuse(COCR)技術となっている。この技術を活用することで、既存のグリーン水素に比べ経済性の高いグリーン水素を製造することが可能となる。共同研究では、コスモエネルギーグループが保有する再生可能エネルギー由来の電力、および海水くみ上げ設備と、静岡大学が保有するCOCR技術を組み合わせることで、経済性の高いグリーン水素製造技術開発を推進する。

川崎重工 遠心式水素圧縮機の実証設備建設 2025/3/26
川崎重工は、水素液化プラント向け遠心式水素圧縮機「KM Comp-H2」の実証設備建設を2025年2月10日より兵庫県加古郡にある播磨工場で開始したと発表した。遠心式水素圧縮機は、新開発のインペラ搭載により従来の水素圧縮機を大幅に上回る昇圧性能を実現し、遠心式を採用することで大容量化により設置面積を従来比7分の1まで削減した。液化水素の原料となる水素ガスを冷却するために使用する冷却用水素ガスを昇圧するプロセスに使用される。NEDO GI基金事業[水素液化機向け大型高効率機器の開発]の一環として実施するもので、水素液化プラント向けとしては世界初となる。2025年11月の竣工を予定し、竣工後は1年にわたり実証運転を行う。

ENEOS 静岡県内に2つの水素ステーションを開設 2025/3/26
ENEOSは、3月27日に静岡県静岡市清水区の清水製油所跡地と、静岡県裾野市にトヨタ自動車が開発を行っているウーブン・シティに水素ステーションを開所したと発表した。静岡清水水素ステーションでは、太陽光発電で発電した電気を活用し水電解装置でグリーン水素を製造し、FCVやFCバス・トラックなどの商用車などの供給するほか、地域の特性を活かした水素供給についても検討する。WOVEN CITY水素ステーションでもグリーン電源を活用し水電解装置で水素を製造、FCVに供給する以外に、水素パイプラインを通じて、ウーブン・シティ内の燃料電池などの水素利用機器に供給を行う。
コスモ石油、岩谷産業 有明に水素ステーションを開所 2025/3/26
コスモ石油マーケティングと岩谷産業は、両者の出資会社である岩谷コスモ水素ステーションが、3月27日、東急都江東区有明の東京都交通局有明自動車営業所内に「岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所」を開所し、4月1日から営業を開始すると発表した。国内では初となるバス営業所内で運営する水素ステーションとなる。
森村SOFC モノジェネSOFCシステムを開発 2025/3/27
森村SOFCテクノロジーは、小型で高効率のモノジェネレーションSOFCシステムを開発したと発表した。森村SOFCは、2021年に業務・産業用FCシステムの量産を開始している。今回家庭用・可搬用FC市場をターゲットとしたセルスタック格納モジュールとモジュールを採用したシステムを開発した。都市ガスやプロパンガス、水素混合など多様な燃料に対応し、500mm×650mm×290mmの小型寸法で、定格発電効率65%を実現している。今後、実証運転を行っていくとしている。

東洋エンジ 中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議と基本合意書を締結 2025/3/28
東洋エンジニアリングは、中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議と「水素やアンモニア等のサプライチェーン構築に向けた相互協力に関する基本合意書」を締結したと発表した。東洋エンジは、2025年2月に中部圏水素利用協議会に加入したことを機に、今回の基本合意書の締結に至った。東洋エンジは、アンモニアプラント建設実績での知見を通じて、アンモニア製造から分解による水素製造までの分野で貢献を目指すとしている。
合成燃料
コスモ石油 名鉄グループ・知多自動車学校の教習用トラック車両にBDFを供給 2025/3/25
コスモ石油マーケティングは、名鉄グループである知多自動車学校と、2月17日、知多自動車学校で使用する教習用トラックなど車両へ、軽油規格を満たした国産バイオディーゼル「コスモCF-5」の供給を開始したと発表した。コスモCF-5は、コスモ石油の軽油に、レボインターナショナルが廃食用油を原料として製造したバイオディーゼル「C-FUEL」を5%混合したBDFだ。愛知県内で、教習用車両にBDFを使用するのは初の取り組みとなる。
コスモ石油 航空会社2社とSAF売買契約を締結 2025/3/26
コスモ石油マーケティングは、3月26日フィンエアーと、3月27日デルタ航空と、SAFFAIRE SKY ENERGYが製造するSAFの売買契約を締結したと発表した。フィンエアーが日本企業とSAFの売買契約を結ぶのは初となる。また、デルタ航空がアジア太平洋地域の空港でSAFを使用するのも初となる。
J-オイルミルズ 非食用植物由来SAFを用いたフライトを沖縄県内路線で実施 2025/3/26
J-オイルミルズは、日本トランスオーシャン航空(JTA)、太陽石油と共同で、沖縄那覇発宮古島行きのJTA565便で、燃料の一部に沖縄県で採取した非食用植物テリハボクおよびポンガミアの種子から精製した国産SAFを用いたフライトを実施したと発表した。J-オイルミルズが、沖縄県管理道路の街路樹から落下したテリハボクおよびポンガミアの種子を用いてニートSAFを生成し、太陽石油が従来のジェット燃料と混合を行った。
JAL、三菱ケミカル、丸紅 国内森林資源活用SAF等製造事業の商用化を検討 2025/3/27
日本航空(JAL)、三菱ケミカル、丸紅は、中国木材、ボーイングジャパン、大林組と共同で、国内の森林資源からSAF、バイオナフサ、バイオディーゼルを製造・販売する事業についてのFSを目的とした覚書を締結したと発表した。豪州の水熱液化技術(Cat-HTR)を開発しているLicella(リセラ)社の技術を活用して、木材残渣からバイオ原油を製造し、改質・精製してSAF等を製造するサプライチェーン構築を目指す。JAL、三菱ケミカル、丸紅が製造事業検討主体となり、中国木材が原料調達・供給方法の検討、ボーイングが技術認証関連支援、大林組がバイオディーゼル利用に向けた検討を行う。FSは2025年12月までを予定し、2030年頃の商用化を目指す。

日揮 SAF原料廃食油供給者を次々と開拓 2025/3/28
日揮HDは、レボインターナショナル、SAFFAIRE SKY ENERGYと共同で行っている国産SAF製造の原料となる廃食用油について、複数の供給者と基本合意書を締結した。3月26日には東京都立病院機構と、3月27日には愛知県弥富市と、3月28日には中央日本土地建物と基本合意書を締結した。弥富市からは市内の小中学校などから年間約7,000L、中央日本土地建物からは年間約8,000Lの廃食用油の回収を見込む。また、3月27日には東急モールズデベロップメントが提供する商業施設を7つに拡大し、72店舗から年間約66,000Lの廃食用油の回収を見込む。
CO2回収、DAC、CCUS
三菱ガス化学 水島コンビナートでメタノール、プロピレンCCU実証 2025/3/24
三菱ガス化学は、JFEスチール、三菱ケミカルと共同で、岡山県倉敷市にある水島コンビナートにおいて、製鉄プロセスから発生する副生ガスを用いてメタノールを製造し、メタノールからプロピレンを製造する実証実験に関する覚書を締結したと発表した。三菱ガスは新設する実証プラントで副生ガスを原料としたメタノール製造実証を行い、三菱ケミカルはメタノールを原料に破折実証設備を活用してプロピレン製造技術(DTP)の適用評価を行い、他の化学品への適用を検討する。2026年度の実証開始を目指す。

運搬・貯蔵、燃焼、その他
関西電力 姫路第二発電所での水素混焼発電実証を開始 2025/3/28
関西電力は、NEDO GI基金事業「季節火力発電所を活用した水素混焼/専焼発電実証」において、これまで行ってきたFSが3月末に完了する見込みとなり、4月から姫路第二発電所で水素混焼率30%発電の実証を開始すると発表した。実証では姫路第二発電所の既設ガスタービン発電設備を活用し、水素発電の運転・保守・安全対策等水素発電に関する運用技術の確立を目指す。混焼率30%の水素混焼発電は日本初の取り組みとなる。
ENEOS 万博シャトルバスに合成燃料を使用 2025/3/28
ENEOSは、西日本ジェイアールバス、日野自動車と協力して、大阪・関西万博期間中に、合成燃料を使用した万博シャトルバスを運行すると発表した。運行に先立ち、3月27日に万博シャトルバスのお披露目式を開催した。合成燃料はENEOS中央技術研究所に設置した実証プラントで製造したのものを供給する。

日本郵船 アンモニア燃料タグボート「魁」の実証航海が完了 2025/3/28
日本郵船は、IHI原動機と共同で2024年8月23日に竣工したアンモニア燃料タグボート「魁」の3ヶ月の実証航海が完了したと発表した。NEDO GI基金事業「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」の一環として実施され、日本郵船グループの新日本海洋社によって、東京湾での引船業務に従事しながら実証航海を実施した。実証では、アンモニアの混焼率、GHG排出削減量を分析し、主機負荷率25%から100%で、重油と比べてGHG削減率90%を確認した。アンモニア燃料船での実運航による解析は世界初であり、アンモニアが船舶用の次世代燃料として有力な選択肢の一つであることを確認したとしている。

プラスチック
レゾナック 使用済みプラを直接基礎化学品へ再生ケミカルリサイクル技術を開発へ 2025/3/27
レゾナックは、マイクロ波化学と共同でNEDO GI事業に採択された「混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発」において、2025年3月より本格的な技術開発を開始したと発表した。両社は2022年より使用済みプラにマイクロ波を照射して分解し、基礎化学品を製造する技術開発に取り組んできた。プロジェクトでは、混合プラスチックの熱分解技術で有用基礎化学品の収率を60wt%以上で製造し、製造時に排出するCO2を0.8kg-CO2/kg-オレフィン以下にする技術開発を行う。これまで新品のプラスチックによるモデル実験では、PE、PP、PS三元系で80wt%、PET、PVCを加えた五元系で70wt%の有用基礎化学品収率を実現している。

ニュースウォッチ
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- 三菱ガス化学 メタノール燃料内航ケミカルタンカーの傭船およびメタノール舶用燃料の供給体制を拡充 2025/3/25
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- バイオ100%燃料が実証開始日タイで開発、脱炭素の新手段へ 2025/3/27
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- 日本特殊陶業など5社、燃料電池使う小型発電システム 2025/3/27
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