政策・規制、審議会
経産省 第7次エネルギー基本計画が閣議決定 2025/2/18
経済産業省は、2月18日第7次エネルギー基本計画が閣議決定されたと発表した。令和3年10月に策定した第6次エネルギー基本計画以降のエネルギー情勢の変化を踏まえ、パブリックコメント等を経て閣議決定された。
エネルギー情勢の変化
第6次エネルギー基本計画以降の状況変化としては、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などの外部要因、DXやGXの進展に伴う電力需要が増加する想定等が挙げられている。
その上で、2040年に向けた政策の方向性として、再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことに加え、脱炭素化が難しい(Hard to Abate)分野での脱炭素化推進に対しては、天然ガスなどへの燃料転換のほか、水素、アンモニア、合成燃料、合成メタンやCCUSなどを活用した対策を進めていく必要性を説いている。
次世代エネルギー
次世代エネルギーについては、水素はアンモニアや合成メタン、合成燃料の基盤となる材料であり、2050年カーボンニュートラル実現に向けた鍵となるとして、GI基金事業等で技術開発競争力を磨き設備投資を促すほか、水素社会推進法に基づき低炭素水素などのサプライチェーンの構築を支援していく。
●水素 コスト面や新規需要創出・拡大に課題はあるが、2030年CIF価格30円/Nm3・最大300万トン/年、2040年1,200万トン、2050年20円/Nm3以下・2,000万トン/年という目標を維持し、3兆円規模の支援を行う。
●アンモニア コスト面や新規需要創出・拡大に課題はあるが、2030年300万トン/年(水素換算約50万トン/年)、2050年約3,000万トン/年(水素換算約500万トン/年)という目標を維持し、支援を行う。
●合成メタン 革新的メタネーション技術を2030年に基盤技術の確立、2040年代の大量生産技術の実現を目指し、技術開発に取り組むとともに、2030年度に供給量の1%相当の合成メタンまたはバイオガスを導管に注入し、ガスの5%をカーボンニュートラル化する。
●グリーンLPガス 現状、バイオディーゼル製造時の副生バイオLPガスが主流だが生産比率は少なく大量生産が課題であり、LPガスに特化した生産技術は確立されていない。革新的触媒等の技術開発や生産プロセス実証を進め2030年代の社会実装を目指す。
●バイオ燃料、合成燃料 バイオ燃料については国産化に向けた技術開発の取り組み推進と共に、資源国との連携を深めサプライチェーン構築を進める。
・自動車分野-2030年度までに一部地域でガソリン直接混合バイオエタノール(E10)の導入を目指し、2040年度から最大E20供給開始を追求する。
・航空分野-2030年SAF供給量を2019年度に日本国内で生産・供給されたジェット燃料のGHG排出量5%相当量以上と設定し、SAF供給体制を構築する。バイオ由来SAF原料については争奪戦が予測されるため、非可食原料の開拓による多角化、安定確保に向けたサプライチェーン構築を行う。
・軽油-原料供給制約があることも踏まえ、バイオディーゼルの導入を推進する。
・合成燃料-自動車分野ではeガソリンやeディーゼル、船舶分野ではeメタノール、航空分野ではeSAFが期待される。2030年代前半までの合成燃料商用化を目指し、研究開発や事業組成、海外事業への参画など商用化に向けた取り組みを進める。
CO2回収・有効利用・貯留
●CCS GX推進戦略で2030年までの事業開始に向けた事業環境整備を目標としていて、先進的CCS事業への支援で、2030年までに年間貯留量600~1,200万トンの確保に目途をつける。
●CCU/カーボンリサイクル カーボンリサイクル活用製品はコスト高になるため、広島県大崎上島に整備したカーボンリサイクル実証研究拠点も活用して技術開発を推進する。
●CDR(Carbon Dioxide Removal) 大気中のCO2回収・吸収、貯留・固定化によりCO2を除去することDACCS、BECCS、新規植林・再植林・森林経営、バイオ炭、風化促進、ブルーカーボン生態系の保全・再生・創出について、環境整備、市場創出、技術開発について支援していく。
2040年度のエネルギー需給の見通し
様々な不確実性が存在することから、複数のシナリオを用いた一定の幅として提示。

合成燃料
日本製紙、住友商事 バイオエタノール製造販売合弁会社を設立へ 2025/2/17
日本製紙と住友商事は、Green Earth Institute(GEI)と共同で、木質バイオマスを原料とするバイオエタノールおよびバイオケミカル製品の製造販売事業に向けて、合弁会社「森空バイオファイナリー合同会社」を設立すると発表した。東北地方の森林資源を原料に、GEIが開発したバイオエタノール生産プロセスを活用して、宮城県にある日本製紙・岩沼工場内にプラントを建設する。プラントでは2027年から年産1,000kL以上のバイオエタノールを製造する予定だ。その後、2030年頃を目標に年産数万kL以上のバイオエタノールおよびバイオケミカル製品製造商用プラントの稼働を目指し、SAF導入・普及への貢献を行うとしている。
三菱重工 大坂・関西万博でeメタンのデジタルプラットフォーム「CO2NNEX」を運用 2025/2/18
三菱重工は大阪ガスと共同で、eメタンの環境価値を証書化するクリーンガス証書の移転や管理を行うプラットフォーム「CO2NNEX」を大阪・関西万博での導入に向けて運用を開始したと発表した。大阪ガスが万博会場で製造するeメタンおよび原料となるCO2・水素、ライフサイクルでのCO2排出量のデータを可視化し、クリーンガス証書の利用を管理する。また、東邦ガス、日本ガス、北陸ガスが製造したeメタン・バイオガスのクリーンガス証書を移転し、大阪ガスが万博会場へ供給する天然ガスに利用する。

ENEOS 万博シャトルバスで合成燃料を供給 2025/2/19
ENEOSは、西日本ジェイアールバス、日野自動車と共同で、大阪・関西万博開催期間中に国内で初となる合成燃料を使用したシャトルバスを1日10便運航すると発表した。ENEOSがNEDO GI基金で支援を受けてENEOS中央技術研究所内に設置した実証プラントで製造した合成燃料を提供する。
カナデビア オランダのバイオメタン事業会社を買収 2025/2/20
カナデビアは、100%子会社であるスイスのイノーバ社が、2025年1月に買収したバイオガスプラント資産管理会社アイオナ社(ICL、英国)を通じて、オランダのバイオメタン事業会社Groengas Cothen(コセン)社の過半数の株式を取得したと発表した。買収したバイオガスプラントは、オランダ中部において現在試運転中で、家畜のふん尿などから年間100GWhのエネルギーを生産する計画だ。カナデビアグループは、2014年に欧州のバイオガス事業に参入し、ドイツ、イタリヤ、英国ICLグループを含む企業や関連技術の買収を行い、事業拡大を図っている。
ENEOS、三菱商事 ENEOS和歌山製造所でのSAF製造の基本設計実施へ 2025/2/21
ENEOSと三菱商事は、ENEOS和歌山事業所においてSAF製造の基本設計を共同で実施すると発表した。ENEOSは2022年より和歌山製造所でのSAF製造事業化調査を行ってきた。基本設計では、廃食油や獣脂などの廃棄物や副産物を主原料として、2028年度以降に年間約30万トン(40万kL)のSAFおよび一部ナフサや軽油留分の製造を想定する。
カーボンフロンティア機構 SAF製造供給体制構築支援事業者を公表 2025/2/21
カーボンフロンティア機構(J-coal)は、経済産業省のSAFの製造・供給体制構築支援事業の採択事業者を発表した。2024年12月2日に経済産業省が募集した補助金事業の採択者となる。補助金金額については別途発表するとしている。J-coalは事業の執行団体となっている。
項番 | 事業者名 | 事業実施場所 | 製造技術 |
---|---|---|---|
1 | 出光興産 | 山口県 | HEFA |
2 | ENEOS | 和歌山県 | HEFA |
3 | 太陽石油 | 沖縄県 | AtJ |
4 | コスモ石油 | 香川県 | AtJ |
CO2回収、DAC、CCUS
川崎重工 CO2を原料としたメタノール・パラキシレン合成に成功 2025/2/20
川崎重工は、大阪大学および三井化学と共同で、CO2を原料としたメタノール合成およびパラキシレン合成の実証試験に成功したと発表した。NEDO実証事業として技術開発を進めているもので、広島県大崎上島町にあるNEDOカーボンリサイクル実証研究拠点において、CO2と水素からメタノールを経由してパラキシレンを合成した。三井化学は川崎重工から委託でメタノール合成触媒について量産技術を確立、大阪大学と川崎重工はパラキシレンを高選択する触媒を開発した。3者は開発を進め、事業化に向けての取り組みを推進してくとしている。

プラスチック
UBE 米国ルイジアナ州でDMC・EMCプラントの起工式を開催 2025/2/17
UBEは、米国ルイジアナ州でジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)プラントの起工式を開催したと発表した。DMCはUBE独自技術である気相ナイトライト法で製造され、米国で唯一のDMC・EMC製造業者である。プラントは、DMCが年産10万トン、EMCが年産4万トンの生産能力を保有し、2026年11月の稼働を予定する。DMC、EMCはウレタン樹脂の現材料として使用され、UBEは買収した高機能ウレタン事業とのシナジー効果を期待するほか、リチウムイオンバッテリーの電解液溶剤としての需要拡大も見込む。
出光、三菱電機 バイオマスプラスチックの家電製品適用で連携 2025/2/21
出光興産と三菱電機は、家電市場でのバイオマス清貧の普及を目指し、バイオマスプラスチックの家電製品への使用に向けた連携を開始すると発表した。出光がマスバランス方式でバイオマス化学品を製造し、それらを原料としたバイオマスプラスチックを三菱電機の空調機器や冷蔵庫などの家電製品に使用することを目指す。

統計
原油、ガソリン 生産、販売量
エチレン、汎用樹脂 生産、販売量
ニュースウォッチ
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